「人間中心」だからこそイノベーションにつながるアイデアは浮かんでくる

なんとなく最近、自分自身のなかで”人間中心”に思考するということがこれまで以上にしっくりくるようになってきたのを感じています。

なぜ”しっくりくるようになってきた”ように感じるかというと、そうやって考えたほうがイノベーションにつながりそうなアイデアを発想しやすいことに気づいたからです。

“人間中心”、特に「ユーザーにとって解決すべき課題は何か?」という問いにこだわり、そのことを中心に思考を深め、展開していくことができれば、 安易でありがちなソリューション発想に逃げずに済み、より根本的にこれまでにないユーザーの体験価値を生み出すアイデアの創出に集中できるということが自 分自身の実感としてわかってきたからです。わかってきたというより、そういう頭の使い方に慣れてきたといったほうがいいのかもしれません。

「人間の体験」を思考の中心におく

とにかく、とにかく人間の体験に思考のフォーカスを当てることだと思います。最初は、それ以外のことを考えなくていいんです。どういうイノベーショ ンを起こすか?とか、どんな技術や製品でイノベーションを起こすか?なんて考えた瞬間、思考のフォーカスはブレブレになるし、従来通りの発想の枠組みに囚 われて逃れられなくなります。

それよりもとにかく人間が何かを体験している様子に目を向け、何故、その人はそんなやり方をしてるのか?とか、今、その人がそうすることで本当にや りたいことは何なのか?を考えてみることです。やることは行動観察なんですが、当たり前に見えているものをいつもの頭で見るというより、頭を切り替えるこ とで見えていないものがそこに存在することに気づくことです。

そういう見方をすることで、はじめて「人間の体験」を思考の中心におくことができるようになります。それぞれの人が現状の体験のなかに、本人さえも そうとは知らずに抱えている問題を、別のどんな体験に変換してあげることで課題は解決され、その人が価値を感じられるような状態を生み出せるか。間違えが ちなのは、そこにいる人の思いにフォーカスしようとすることですが、そうではなく、あくまで実際の体験や、その体験がなされる状況に目を向けることが「人 間中心」で考えるということです。

革新的な答えを見つけるためには、革新的な問いを見つけることが大事

もちろん、それには他人の体験を見てみることからはじめてみることが必要なんだと思います。フィールドワークに出かけて、他人の体験に触れようと心がけることが大事なことだと思います。

実際のフィールドで、それぞれの人が気づかぬ課題を抱える体験を見つけること。そして、現状の体験を別のどんな体験に変えてあげることが、その人に とって価値あることなのか?を考えること。そういう「人間の体験」にフォーカスして考えるほうが、実は本当に革新的なソリューションが見つかる可能性は高 まります。

逆に、従来のように、人びとのどんな体験にまつわる課題を解決するかを問うことを疎かにしたまま、表面的な課題の解決のためのソリューションやコン セプトをどうするかという方向に安易に逃げ込んでしまうから、どこにでもあるありきたりのものができてしまうのだと思います。それは間違いなくアイデアが 貧困というよりも、問いの立て方が間違っているのです。ありきたりの課題に対してはありきたりの答えしか見出せません。革新的な答えを見つけるためには、 誰も気づいていない人びとの課題を見つけることで、それをどうしたら解決できるか?と革新的な問いとして発する必要があるのです。

型にはまりたくなければ型を使うな

それから、もう1つ。わざわざ自分の思考を革新的なところから遠ざけてしまう罠があります。まず型(フレームワーク)を想定して、それに様々な事象 を当てはめることで答えを導き出そうとする演繹的な思考法がそれです。「人間中心」で行なうデザイン思考という思考方法はそれとはまったく別です。どちら かというと帰納的に個別の具体的な事象を収集して並べることで、型と考えられそうなものを発見するような思考を行ないます。

いま話題の「ビジネスモデル・ジェネレーション」に僕自身がすこし違和感を感じるのは、その点です。一見、デザイン思考的なスタイルを踏襲している ように見えますが、最初から型として決まったフレームワークにこだわりすぎている点で、だいぶデザイン思考的な方法とは相反するところがあるように思いま す。もちろん、そのことをはっきりと認識して用いることで、そんな問題は回避できます。ぜひフレームの罠に注意して利用していただきたいものです。

さて、デザイン思考はどちらかというと帰納的と言いましたが、さらに正確に言うなら、デザイン思考の本質の部分はアブダクションです。アブダクションについては拙著『デザイン思考の仕事術』 に詳しく書いていますので、そちらを参照していただきたいのですが、簡単にいえば、いまだ説明がなされていない謎を発見し、その謎に関する説明を仮説として組み立てる思考の働かせ方がアブダクションです。まさに先ほど、人間中心で考えるということは「誰も気づいていない人びとの課題を見つけ」、「それをどうしたら解決できるか?と革新的な問いとして発する」ことだと書いたのと同じですよね。

目の前の困ってる人を助けようとする際に、商品企画とか技術開発とかはじめますか?

昨日の「デザイン思考の使い方を間違えないために…」 という記事でも書いたように「デザイン思考はイノベーションの方法」です。イノベーションを求めるときに、演繹的な思考態度で、決まったフレームワークに 当てはめることで物事の説明を成そうとするのでは、あまりにイノベーションが起こる可能性を自ら塞いでしまいすぎだと思いませんか。

型にはまった物の見方をやめて、普通のものをこれまでにない見方でみることがデザイン思考の特徴の1つです。そして、それには「人間中心」になるの が実は一番の近道なんだと僕は最近実感しています。本当はすごくシンプルなことなんです、「人間中心」で考えるというのは…。

だって、ちょっと想像してみて下さい。

自分の目の前にいる人がなにか困っていないかと互いに気遣い、何らかの答えを出してやろうとする姿勢。それって当たり前のことだと思いますが、それが本来「人間中心」で考えるデザイン思考のベースにあるものなんだと思います。

にもかかわらず、困っている相手をどうにかしようとする時に、最初から答えをして出すものを「商品」に絞ってしまったりするからおかしくなるわけで す。そういう妙な縛りから解放されて、シンプルに人びとの困っていることに目を向けて、これからの社会をどう変革していくか?を考えることから、より自由 な発想でソーシャルイノベーションの種は生まれてくるのだと思います。

というわけで、これからますます人間に目を向けて、ぜひみなさんといっしょに新しい社会の形を模索していきたいと思いますので、何か相談などございましたらお気軽にご相談ください。

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