脱サラ養蜂家

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私の零細養蜂家(副業)としての一年の仕事内容です。 飼育群数は季節によって変動しますが20~50群です。 作業時間は週に30分~2時間位です。 これから自力で養蜂家を目指す方は参考にして下さい。

養蜂家の素質

養蜂家になるにはミツバチという生物に興味が無いと作業が辛いと思います。 養蜂業は、地味で泥臭い作業が多くミツバチに刺される事もあります。これらの事を受け入れられるなら業としての養蜂家の素質があります。 どんな仕事にでも言える事ですが、「健康」と「継続」は最重要です。

仕事内容(沖縄県の場合)

  • 春:蜂が増える季節です。 大きくなった群を分割し増群します。(販売もします。)
  • 夏:暑さで蜂は増えにくくなります。 蜜源植物も少ないので、餌やりは欠かせません。
  • 秋:蜂が増える季節です。 冬にそなえ各群の規模調整を行ないます。(販売もします。)
  • 冬:沖縄県なら寒さが厳しい1~2月を除けば、ミツバチの調子は良いです。(販売もします。)

だいたいこんな感じのサイクルです。 体力的には暑さが厳しい夏が一番キツイです。 冬は出荷用の巣箱や巣枠作るのが疲れます。 25群くらいから内検が面倒になってきて、50群なると完全に労働です。私は作業時間が限られているので50群が限界ですが、時間に余裕がある方はもっと大群を飼っても大丈夫です。

私の場合は、養蜂場まで100km近く移動しなければならないため、仕事ついでに立ち寄るなどしてガソリン代を節約しています。養蜂をするためだけに、100km(往復で200kmにもなります)も離れた養蜂場に行く事は時間的・コスト的にできません。

現在は近場にも小さく養蜂場を構えていますが、養蜂場は住まいから近ければ近いほど良いと感じます。

対人関係

あるサイトで読みましたが、海外の日系人養蜂家の方が

「蜂という仕事は嫌いではないが,蜂場を巡る人間関係が面倒であること,ミツバチの盗難やミツバチによる農場関係者への刺害が心配であることなどから,生涯の職業としては考えてはいない。」

と言っています。 それだけミツバチを沢山置く場所では色々問題が起きます。 実際、私にも起きました。

私は養蜂を親族の庭で小さく始めましたが、飼育群数が増えるに連れて・・・親族の庭からも追い出され、努めている会社の工場敷地からも追い出され、現在はまったく人気の無い山奥にほとんどの群を移動しました。

みんな初めは「置いて良いよ」と言いました。 しかし、実際に20~50群を置かれるとハチに刺されたり・ハチの糞や死骸の問題が頻発しました。そして最終的には「もうここで飼うな。 養蜂を辞めるかどかに持っていけ」となりました。 急に大量の巣箱を撤去しろと言われたので、一時は、ミツバチの置き場所が無く廃業寸前にまで追い込まれました。 このような揉め事は精神的に疲れるので人間関係で揉める前に、人が住んでいない場所に主力の養蜂場を作る事を強く推奨します。

他の養蜂家(専業・副業)との関係や災害

自分の養蜂場が他の養蜂家の養蜂場と近かった場合(1.5km以内)は、蜜源・花粉源植物の取り合いを避ける為、管轄の役場から通達があり養蜂家同士で話し合いになる事があります。 老舗養蜂家の方が教えてくれましたが、養蜂場の場所取りは基本的に早い者勝ちだそうです。(法的拘束力はありません。) 新規参入する養蜂家は、良い場所に陣取れない可能性があります。

大群を飼育する養蜂場の確保には、地主さん、近くの養蜂家、近隣住民とのコミュニケーションが非常に重要になってきます。この辺を疎かにすると、後々トラブルの原因になります。

毎年、地元の養蜂家達が話し合い蜜源植物の権利分配(各自の区域決め)をする地域もあるので、養蜂業を始める前に一度地元養蜂家に話を伺うのが良いでしょう。 勝手に巣箱を置いてハチミツを沢山採っていると、地元養蜂家と揉め事が起きる可能性があります。

養蜂は畜産にあたりますが、実際は農業に近いです。周囲の環境の変化に大きく依存しており天候・その他の不確定要素が多いです。そういう理由で、交配用ミツバチの価格は安定せず時価になっています。 ミツバチが農薬・ダニ害等で大量死したり、盗難される可能性もあります。

自然災害に関しては・・・運です。(運が悪いと大変な事になります。) 自然災害に備え過ぎると、コストが掛り過ぎて赤字になるのである程度の割り切りは必要だと思います。 沖縄の場合は、巨大台風に連続して来られると群が滅茶苦茶弱ります。

小規模養蜂の現状

私は専業で養蜂をしようとは思いません。50群程度では収入が不安定すぎるからです。250群くらい飼育できる時間と群を置く場所があれば、もう少し養蜂に力を入れたいのですが・・・現状は無理です。 養蜂だけで300万以上の利益を出すには、最低でも250群は必要だと感じます。

*計算上、年間で1群から12000円位の利益が出る計算になります。(利益は販売価格により変動します。)

沖縄県には、2~3養蜂組合がありますが私は入っていません。組合に加入すると養蜂の資材や餌が安く買えるそうですが・・・組合費が万単位で掛かり50群程度なら入るメリットが無いと判断しました。(地域により組合費が違います。組合費が安いなら入った方が良いです。)

小規模養蜂業ならば、初期投資金額は10~50万あれば何とか形になります。 そういう意味では個人事業としての敷居は低いですが、養蜂は見かけによらず重労働です。真夏の内検や出荷の時など本当に疲れます。飼育群数が増えるほど自由な時間は確実に減りますし、趣味の少数群の飼育と異なり養蜂が楽しくありません。

個人で養蜂業をする場合、確定申告をするために簿記の知識が少し必要です。下記の本を読めば問題無いでしょう。とても理解しやすい本です。副業で養蜂をする方は、養蜂業で出た赤字で所得税が減額されて戻ってくる事もあります。確定申告する時は、給与所得の源泉徴収票も一緒に提出しましょう。

養蜂は農業(畜産)扱いになります。普通の青色申告のようにスラスラ書けない部分が少しあります。そういう時は身寄りの税務署に相談してください。聞けば解ります。

青色申告の「複式簿記が面倒くせ~」という方は、白色申告にしましょう。(個人的には白色がお勧め)

私には養蜂の師匠が居ないので、何をするにも経験が無く初めは非常に大変でした。まだ養蜂始めて4年目なので日々切磋琢磨しています。

養蜂の参考書は多くありますが、古い養蜂の本はお勧めできません。昔と今とでは自然環境も変わっていますし、養蜂技術(特に女王蜂量産・ロイヤルゼリーの技術)は、日々進歩しており古い技術だと手間が掛り過ぎます。日本より一部海外の方が養蜂技術は進んでいるので、そちらの技術を取り入れるほうが効率化を図れます。

そして、初めから何十万もする養蜂セットなどは買わない方が良いです。まずは、最低限の養蜂道具だけを購入し養蜂の基礎からじっくり取り組んで下さい。 1年目は、あまりお金を掛けず3~5群を楽しく養蜂して経験を積む位で良いと思います。1年やってみてもっと飼育出来そうだと思ったら、追加で何群か買ったり必要な養蜂道具を徐々に揃えるのが良いと思います。

私の様に何も経験が無い状態から始める場合は、まず養蜂に適した土地を自力で探してミツバチを30~60群くらいまで増やす事を目標にしてください。飼育する土地が悪いと増群する事さえ困難なので、年間を通してミツバチが上手く増えない時は、飼育場所が悪いと考えて下さい。

山奥などに養蜂場を構える場合は、私の様に1人で養蜂するのではなく、2人位で養蜂すると安全で良いと思います。また、他人と組む場合・大きな取引の場合は、面倒でも覚書・契約書を作り、万が一のトラブルに備える事をお勧めします。口約束だけで商売してるとトラブルの原因になります(経験談)。 

巣箱は長持ちするので、はじめは正規品巣箱をミツバチと一緒に購入しても損は無いと思います。巣枠は自分で組み立てて量産しましょう。大量に群を増やす予定なら、巣箱も自作したほうが良いでしょう。 養蜂は、道具以外にも、餌代と対ダニ剤に継続してお金が掛ります。予算を使い切ってしまわない様に注意してください。

ミツバチの販路(超重要)

ミツバチを増やすのは慣れてくれば簡単です。しかし販路が無いと増えたミツバチの世話・維持費が圧し掛かってきます。事業開始2年目くらいにミツバチは沢山いるけど販路が無いという事態に一時陥りました。 売れないミツバチは単なる金食い虫です。

たまたま他の養蜂家の方がミツバチ不足だったので、安く20群位売りましたが赤字でした。その後、色々考えた結果・・・ネット通して直接お客さんに売るのが一番儲かるという結論になりました。中間業者を通さないので、売り手と買い手、両方がwin-winの関係になれます。

小規模養蜂の場合は、販売できるミツバチ数が少なく他の養蜂家or業者に卸してるだけでは、買いたたかれるだけで本当に美味しくない商売です。養蜂作業も大事ですが、「販路の確保」も同時に進めるべきです。

業者に足元を見られ、大切に育てたミツバチを安く買い叩かれないためには、ミツバチをお客さんに直接売れるルートを開拓する、または養蜂を他の事業とリンクさせたりします。 例えば、ミツバチ販売サイトを立ち上げ直接販売する、洋菓子店がミツバチを飼育し自家製ハチミツを使ったケーキ・お菓子等を作って販売する、農家が自前で蜂を増やして交配用に使用する等です。

ミツバチが足りない時は、交配用ミツバチをかなりの高値で買い取ってくれる業者の方もいらっしゃるので、そちらを利用するのも販路が無さ過ぎる場合は選択肢としては有りでしょう。ミツバチの相場は季節によりますが、巣枠一枚(有子巣枠・ミツバチ約2000匹)で2500~7000円位です。(重要: 秋は安く、春は高い)

育てたミツバチを安く売り過ぎると時給500円で労働したほうが安定して稼げるという事態になるので、需要と供給を考慮して、なるべく労働に見合う価格で売りましょう。

ミツバチを無事に出荷できても、輸送中に全滅する事が時々起ります。ミツバチに限らず、生き物の長距離輸送にはリスクが必ずあります。 販売価格は、このようなリスクも考慮して決定して下さい。

あえて大群を飼わず、少数精鋭群でハチミツを狙うのも良いと思います。少数群なら維持費が掛らず投資額が少なくて済みます。

零細養蜂家の現状として夢の無い事を書きましたが・・・浦添養蜂園の事は嫌いになっても、ミツバチの事は嫌いにならないでください。 ここに書かれている事は、個人的な経験と感想なので鵜呑みしないでください。最終的には自分で考え決断し行動する必要があります。

…続きは元サイトでご覧ください。

 

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まずは二ホンミツバチを飼ってみよう!

素人が初めてニホンミツバチの飼育にチャレンジした、失敗と成功の軌跡をまとめてみました。
ニホンミツバチとは?から、巣箱の手作りとその作り方、ニホンミツバチの捕獲から飼育方法の基礎、採蜜の方法、自家製100%ローヤルゼリーの味と効用まで。

 1.ニホンミツバチ(日本蜜蜂)とは?

ミツバチ(蜜蜂、a (honey) bee)は、ハチ目(膜翅目)・ミツバチ科(Apidae)・ミツバチ属(Apis)に属する昆虫です。

日本では、「ニホンミツバチ」(日本蜜蜂)と「セイヨウミツバチ」(西洋蜜蜂)の2種が飼育(養蜂)されて蜜の採取が行われていますが、そのほとんどが外来のセイヨウミツバチであり、日本に古くから生存するニホンミツバチは野生の採蜜が主で、その蜂蜜(ハチミツ)の流通量は非常に少ないのが現状です。

日本で『養蜂』を行い、その『蜂蜜を販売』するには、「養蜂振興法」という法律を守らなければなりません。
以前は、『セイヨウミツバチだけが対象で、ニホンミツバチは対象外』と一般的に解釈されていましたが、平成25年1月に施行された「改正養蜂振興法」では、『原則として蜜蜂を飼育する場合には、都道府県知事への飼育届の提出が必要』となりました。

「改正養蜂振興法」とは?

平成24年6月27日法律第45号により、平成25年1月1日から「改正養蜂振興法」が施行されました。この法律により、以前は『利益を得る目的で蜜蜂を飼育する人(養蜂業者)のみが対象』でしたが、改正に伴い『全ての蜜蜂を飼育する人が対象』となりました。
つまり、蜜蜂を飼育する場合には(趣味で蜜蜂を飼育する場合や、日本蜜蜂を飼育する場合も対象です)、住所地を管轄する都道府県に『蜜蜂飼育届』を提出しなければなりません(手数料はかかりません)。
また、届出の内容に変更があった場合には、1か月以内に『蜜蜂飼育変更届』を提出する必要があります。

ただし、蜂蜜や蜜蜂等の販売や譲渡を行わず、かつ次のいずれかに該当する場合は、届出は不要です。

  • 農作物などの花粉交配のために、必要な期間のみ一時的に飼育され、蜂蜜・蜜蜂を販売されていない方
  • 反復利用可能な蜂房を設置せず、野生のニホンミツバチから少量の蜜を採取するだけで、「飼育」を行っていない方
  • 研究室など、密閉構造の飼育管理設備で飼育する方

※ 蜜蜂を飼育する方は、「改正養蜂振興法の施行に関するQ&Aについて – 農林水産省(Adobe PDF)」に留意して下さい。

「セイヨウミツバチ」と「ニホンミツバチ」

ニホンミツバチセイヨウミツバチとニホンミツバチの外観の大きな違いは、その体(腹部)の色です。
簡単な見分け方ですが、セイヨウミツバチは体全体が黄色(だいだい色)っぽく、ニホンミツバチは腹部全体が黒っぽく見えます。また、ニホンミツバチの胴体は縞模様がハッキリしていて、節の白い縞が目立ちます。また、セイヨウミツバチと比べると一回り小柄です。

ニホンミツバチは元々が野生種であるため、管理する必要はほとんどありませんが、セイヨウミツバチを養蜂するためには、小まめな管理が必要です。
セイヨウミツバチは、「アメリカ腐蛆病」や「チョーク病」といった伝染病にかかりやすく、「ミツバチヘギイタダニ」等のダニも寄生しやすく、ニホンミツバチに比べて耐虫耐病性が弱いためです。
また、ニホンミツバチはセイヨウミツバチに比べて、天敵のオオスズメバチに対しても強く、耐寒性も強いため越冬させやすいという特徴があります。

ただし、ニホンミツバチは体が小さく群れの数も数千から2万匹程度なのに対して、セイヨウミツバチは体も大きく数万匹の群れを作るため、一年に一回しか採蜜ができないニホンミツバチに比べて、5倍から10倍ものにハチミツが採れます。
また、セイヨウミツバチが逃去することはほとんどありませんが、ニホンミツバチは巣の環境が悪化すると直ぐに逃げていってしまいます。

このことから、セイヨウミツバチの方が採蜜の生産性がよいため飼育が圧倒的に盛んですが、耐病性と耐ダニ性に強い抵抗力を持ち殺虫剤や殺菌剤が不要のニホンミツバチからは、安全で安心なハチミツを採ることができ、このハチミツの美味しさを知ってしまうと、もう他のどんなハチミツも食べられなくなってしまうらしいです。

2.巣箱の作り方と図面

ニホンミツバチの巣箱としては、”丸洞”(丸太をくり抜いた物)や、”重箱式”(幾つかの箱を積み上げた物)、”巣枠式”(箱の中に何列かの巣枠を垂らした物)など、様々です。

近所に住むキマルのおじさんは、得意のチェンソーを使って丸太をくり抜いて、あっという間に4つも5つもの巣箱を作ってしまいました!。これなら材料費はタダです。
→ 【YouTube】 キマルのチェーンソーアート(NO2)

はじめに断っておきますが、『暇と、時間と、工作の才能と、何から何まで自分でやりたいという強いこだわり』が無い人は、巣箱は買ってください!
DIYで自分で作るとしても、材料を買うだけで5千円、更に工具を揃えたら一万円近くの出費になります。その結果としての出来栄えも、市販品の方がはるかに立派だったりして。。。

その上で、素人がわざわざ日曜大工で、金と手間・暇と時間をかけて手作りするわけですから、どうせなら見栄えにも拘りたい!(ミツバチが住みついてくれどうかは、見かけではなくその質なのですが・・・)。
そこで、見よう見真似で、箱型と重箱型の合作のような、我流の巣箱を設計してみました。

なお、巣箱として利用するには、雨ざらしにして杉材の「アク抜き」をする必要があります。時間があれば半年から一年間も雨ざらしにするか、あるいは一週間ほど水に漬け込むと良いらしいのですが、そのような大きなタライが我が家には見当たらなかったもので・・・(どうしてもって言うなら、風呂桶に漬け込むってのはどうでしょう?)。
で結局、手間暇が惜しいので、数日間ほど日陰に材料を並べて、毎朝夕に水をかけて陰干しをしてみました。。。

用意するもの(必要な材料と道具、費用の目安)

材料には杉板を使います。出来るだけ厚い板を使った方が断熱効果が高く、寒さ暑さ対策になりますが、厚くなればなるほど価格も高くなり、加工も難くなります。
ただし、私は今回、安く手に入った12mm厚の杉野地板(幅180mm)を使いましたが、薄すぎてちょっとグラグラと安定感に欠けます。ネットで検索すると、15mm厚の野地板(15×180×2000mm)もあるようなので、もし手に入るようであれば、15mm厚をお勧めします(図面の寸法は違ってきますのでご留意を)。

ちなみに、「我が家にミツバチがやって来た」の著者、久志冨士男さんによると、10年を費やして研究した結果、待ち箱として最も優れたサイズは、厚さ25mm(規格品なら24mmも可)、内寸250×250×150mm、その3段の重箱式だそうです。

以下のの材料の購入額は、おおよそ5千円でした(近所のコメリでの値段)。工具は家にあったもので事足りましたが、新調するとなると安い物でも4千円ほどかかります。飲み会を1~2回ほど断ってください・・・。

材料
杉 野地板 (12×180×1820mm)×5枚束=¥950+税
杉材(K+BUILD) (60×12×1820mm)×5本=¥521×5+税
杉材(K+BUILD) (45×12×1820mm)×1本=¥407+税
ステンレス皿タッピング(中袋)ネジ (3×20、60本入り)×1袋=¥283+税
ステンレス皿タッピング(中袋)ネジ (3×25、60本入り)×1袋=¥283+税
工具
のこぎり (RYOBI 電動ジグソー
電動ドリル (充電式電動ドリル ドライバーセット

巣箱の構造

キマル巣箱の大きさは、丸太型のものは直径が約50cmくらい(チェンソーで中をくり抜くので、この太さが必要)、箱型のものは一辺の長さが25~30cmくらいが一般的で、高さは50~60cmくらいの縦長の形にします。

箱には蜂が出入りする“巣門”(蜂の出入口)を空けますが、大きすぎると外敵であるスズメバチが入りやすくなってしまい、逆に狭すぎると暑さと湿気が籠りやすく巣の環境悪化に繋がります。
働き蜂が出入りするためには4mm程度の隙間が必要で、一般的には5mm~7mm程度とすることが多いようです。直径1cm程度の穴をあける場合もあります。もし先に女王蜂を捕まえてきて巣箱に入れる場合には、体が大きな女王蜂が逃げ出さないように3.6~3.9mmの隙間にします。ただし、これだと働き蜂も出入りに窮屈なので、定着が確認できたら隙間を大きくしてあげましょう。

“巣板”(6角構造体の蜜蜂の巣そのもの)の落下防止のために、十文字の桟を架けます。横板に穴を開けて太い針金を通すと簡単ですが、太い針金やワイヤーが無い場合には、杉板の端材を細長く切って、最上段の重箱に十文字に架かるように外側からネジ止めします。

必要な時に分解が出来るよう、釘ではなく“ステンレス製のネジ”止めとします。接着剤は使いません!

巣箱の底にはゴミが溜まるので、掃除ができるように底板は取り外せるようにします。
また、蜜を採集できない冬期や蜂が弱ってしまった時に、砂糖液を給餌する必要があり、この場合にも底板を外して入れて上げます。

巣箱の上部からは光が入らないように隙間なく木材を接合させ(接着剤は使いません)、雨が染み込んで湿気が籠らないように、巣箱の上には波板やトタン板などを載せて雨露がしのげるようにします。ただし夏に暑さには注意してください。

オリジナル設計図

まず、ご注意!。 このオリジナル巣箱の図面(設計図)の寸法は、あくまで机上の計算によるものです。ゆめゆめ、この通りに切りだしたら、後は組立てるだけとは、絶対に思わないでください!。
なぜなら、長さ1間の杉板が5枚で1千円ですよ!?、幅も厚みも規格通りではありません。1cmだって誤差の内です。さらに、反っていたり曲がっていたりと、難題は山積みです。できれば、一部材ずつ組み立てながら実寸を図ってから切り出すと、比較的きれいに組み立てられると思います。

巣箱の設計図面
完成した巣箱の写真

3.日本蜜蜂の飼い方の基本

ニホンミツバチの生態については、その手の専門書を読むより、百田尚樹氏の小説「風の中のマリア」を読まれることを、お勧めします。
百田氏の小説の内容については色々ご意見あるかと思いますが、ミツバチについては、とてもよく調べて書かれている小説だと思います。

(1)ニホンミツバチの捕獲

巣箱が出来ても、肝心のミツバチに住み着いてもらえなければ、ゴミ箱にもなりません・・・。

ミツバチの捕獲は、主にの分蜂のシーズンに行います。分蜂(分封)とは、蜂蜜がたくさん貯まってミツバチの数も多くなり、巣が窮屈になったことで、ミツバチ達が分家することです。この分蜂の時期は、九州では3月下旬に始まり5月の前半、関東では4月から6月初旬、東北だと5月中旬から6月末ころです。その年の天候にもより前後しますが、もっとも最盛期は、そのうちの一月間ほどです。

ミツバチに、自分の作った巣に住み着いてもらうには、(1)自然に住み着いてもらえるまでじっと待つ!、(2)強引にミツバチの群を捕獲して巣箱の中に女王蜂を幽閉する!、という二種類の方法があります。

(1)自然に住み着いてもらえるまでじっと待つ!
ミツバチをよく見かける野山に巣箱を仕掛けて、自然に巣箱にミツバチが住み着くのを待ちます。 大きな木の下や納屋の軒下、岩場などで、日中の暑い直射日光を避けて少し薄暗いぐらい場所、前方が開けている場所が良いとされています。
ただ待つのも気が長い話なので、ミツバチを誘き寄せる工夫を巣箱に施します。
まず、巣箱の内側に「蜜蝋 」を塗り付けます。蜜蝋の作り方は、採蜜した際に残った巣の残渣を、お湯で煮詰めて濾しておき、それが冷めると上澄みの脂分(蜜蝋)が固まりますので、残った水を捨てて、採取します。再度熱を加えて溶かし、濾す作業を繰り返すと、より精製度の高い蜜蝋になります。
蜜蝋が無ければ、蜂蜜で代用しましょう。蜂蜜も高いという人は、黒砂糖と焼酎を1:10で混ぜた液でも良いらしいです。
また、シンビジューム(ラン)の一種である「キンリョウヘン 」(金陵辺)は、女王蜂のフェロモンに似た匂いを放つらしく、他の昆虫は避けるのですが、日本蜜蜂だけは誘われて寄ってくると言われています。分蜂の時期にこの花を巣箱の横に置いておくと、営巣してくれる確率が高まるようです。もしキョウリンヘンの花期が終わってしまったら、少し開花時期が遅い”デボニアナム ”、”ミスムフェット”、”フォアゴットンフルーツ ”といったシンビジュームでも、日本蜜蜂の誘引効果があるようです。
(2)強引にミツバチの群を捕獲して巣箱の中に女王蜂を幽閉する!
集めた蜜蝋分蜂したニホンミツバチの蜂玉を見つけ、その蜂玉を巣箱に落とし込んで捕獲するという手荒な方法です。ただし、女王蜂だけは絶対に捕獲しなければなりません。何なら、女王蜂と少しの働き蜂だけでもいいくらいです。
ただし、うまく捕獲できたとしても、巣箱とその設置された場所の環境が気に入らなければ、ミツバチは逃亡してしまいます。
そこで、定着率を高めるために、女王蜂を巣箱の中に幽閉してしまう方法があります。巣門の大きさを”3.6~3.9mm”の隙間にしておくと、働き蜂は何とか通れますが、体の大きな女王蜂は通ることができません。もし定着が確認できたら、働き蜂のために隙間を広げてやってください。
野山で、分蜂したニホンミツバチの巣玉を見つけるのも、簡単ではありません。そこで、既にニホンミツバチを飼っているお宅にお願いして、分蜂の時期(4~6月頃)に、自分の空の巣箱を近くに置かせてもらうという方法もあります。なお、近くと言っても、直ぐ横では”縄張り争い”になってしまい、分家という分蜂の目的が果たせません。数十メートルから100mくらいは、離れる必要があります。ただ、最近はミツバチが減って、分蜂一群=10万円という値段も聞きますので、頼む相手によっては、高くつきそうです・・・。
先に紹介したキマルのおじさんが、分蜂板を設置しておいて、今年のGW中に分蜂群(蜂玉)を捕獲した時の様子を記事にしましたので、参考にしてください。

まぁ、自分の身も大切ですし、なかなか手荒な方法は取りたくないものです。かと言って、一鉢が数千円もする”キンリョウヘン”も、なかなか手が出せません。そこで、蜂トラップ(スズメバチ駆除用)の”誘引剤”(集蜂液)を代用してみるという手もありそうです。

「誘引剤」(集蜂液)は、主に害虫となるスズメバチを誘引して、駆除するために使われるのが一般的ですが、スズメバチが誘引できるのであればニホンミツバチも誘引できるはずと、様々な配合を研究して、誘引剤が作られているようです。なお、ご自分で配合される場合は、くれぐれもスズメバチを誘引しないようにご注意ください。命に係わりますので!。

巣箱の中の写真

(2)季節ごとの養蜂

夏は、花も多くて、ミツバチには良い季節のように思いますが、他の昆虫との競争が激化して、実は蜜を集め難い季節らしいです。その上、暑さで体力が落ちると、スムシ(蛾の幼虫)の発生を抑制できずに、巣から逃去してしまうことも。したがって、夏をどう乗り切るかが、ミツバチの飼育では一番重要です。

まず、暑さ対策として、木陰で風通しがよく、南に開けた場所に巣を置き、巣の温度が上がりすぎないように注意しましょう。そして、巣底のゴミの掃除をしながら、こまめに点検をして、もし、スムシやゴキブリの侵入を発見したら、除去と熱湯消毒をしてあげましょう。

そもそも、スムシはミツバチの天敵ではなく、共生する仲間らしいです。スムシは、古くなった巣板を撤去してくれる役割を担い、元気なミツバチはそれを噛んで切り落とし、新しい巣板を作ることができます。しかし、ミツバチが弱っていると、それができず、スムシに巣を占領されてしまうという事態が起こります。つまり、何よりミツバチを元気に育てることが、とても重要というわけです。

もし、蜜源不足でミツバチが弱っているようだと、たとえ周りに花がたくさんあっても、給餌をしてあげる必要があります。給餌には、他のミツバチに横取りされるのを防ぐため、匂いの少ない精糖(白砂糖)を使います。1kgの砂糖を400Lの水で溶くと、おおよそ70%の溶液になります。これを容器に入れ、ミツバチが溺れないように、隙間を空けて、ワラ屑や発泡スチロールの板を浮かべてあげます。この1kgの砂糖水を、ミツバチは、だいたい数時間で飲み干してしまいます。溶液が無くなったら片づけ、容器はよく洗って、熱湯消毒をしておきます。これを、飲み干し具合を観察しながら、数日から一週間ほど与え続けることで、ミツバチは元気を取り戻してくれるはずです。

また、夏には、田や畑で農薬散布が盛んに行われますが、農薬は、ミツバチにとってスムシやオオスズメバチより、大敵です。最近は、無人ヘリコプターで、高濃度の農薬を散布することもあり、この時に、もし風下に巣があったら、3kmも先までミツバチが全滅してしまうことも。周辺の環境に、十分注意してください。

お盆を過ぎてから、11月末頃までの最大の敵は、”オオスズメバチ”です。強勢のミツバチ群であれば、スズメバチの襲撃を迎え撃って、追い払えるだけの力を持っているのですが、夏を乗りこえるのに弱ってしまっていると、オオスズメバチの来襲で、ニホンミツバチが壊滅させられてしまうこともあります。

まず、巣門の幅(高さ)を、10mm以上にしてはいけません。オオスズメバチが、侵入できてしまいます。6mmくらいが最適とされますが、巣箱の板が朽ちかかっていたり、薄かったりすると、オオスズメバチは食いちぎって穴を広げ、侵入してしまいます。その場合は、大がかりになってしまいますが、巣全体や巣門の前方に、10mm幅以下のネットや網で、オオスズメバチを防除する方法もあります。

お盆を過ぎてから、11月末頃までの最大の敵は、”オオスズメバチ”です。強勢のミツバチ群であれば、スズメバチの襲撃を迎え撃って、追い払えるだけの力を持っているのですが、夏を乗りこえるのに弱ってしまっていると、オオスズメバチの来襲で、ニホンミツバチが壊滅させられてしまうこともあります。

なお、スズメバチトラップを仕掛けて、駆除する方法もありますが、ミツバチもスズメバチも同じ蜂、スズメバチだけを殺してしまうことには、反対意見もあるようです。また、トラップを仕掛けて、スズメバチを呼び寄せてしまっては、意味がありません。仕掛ける時期や場所を、工夫する必要があります。

そして、夏の暑さとオオスズメバチの来襲を無事に乗り切れば、秋には、まちにまった採蜜の時期がやってきます。

肌寒くなったころ、もし貯蜜の量が少ない場合には、越冬用に、消費量をみながら一週間ほど、給餌してあげる必要があります。なお、この時期は寒さで溶液が固まりやすいので、濃度は50%くらいまで下げ、溶液の温度も少し温めてやるとよいでしょう。

また、厳しい寒冷地では、巣箱の中の温度が下がりすぎないように、巣箱の周りを毛布や保温材で覆って、寒風から巣を守ってあげる必要があります。

無事に冬を乗り切り、春を迎え3月頃になると、産卵や育児が盛んになります。しかし、まだ花粉や蜂蜜が不足する時期なので、給餌が必要となる場合があります。

また、脱糞の量が多くなる時期なので、巣底の掃除と消毒に気を配ってください。

暖かくなり、果物の花が咲きだす頃になると、また分蜂の時期がやってきます。捕獲するためには、分蜂してもらわないとならないのですが、飼育中の巣から分蜂されて、本家が弱体化してしまっては、元も子もありません。もし、冬の寒さ対策で巣枠を減らしてスペースを狭めていたり、巣が大きくなっているようであれば、巣枠(巣箱)を足して、スペースを広げてあげる必要があります。可能であれば、こまめに採蜜をした方が、分蜂を抑止することに繋がります。

(3)ミツバチに刺されないように!

ミツバチは滅多に人を刺しませんが、あまり侮ってばかりいると、大ケガをしかねませんので、ご注意を。稀に、アレルギーに過敏な人が、ミツバチに刺されて、アナフィラキシーショックで呼吸困難になったり、場合によっては心肺停止に至るケースもある程です。

ニホンミツバチは、飼い主や人に馴れる、かわいいペットです。ただし、一度でも乱暴に扱ってしまうと、代替わりしても人嫌いは直らず、ずっと気性の激しい蜂たちを、飼い続けなければならない羽目になります。近所の悪ガキどもに悪戯されないように、注意も必要です。また、ほったらかしにせず、毎日のように、ジッと暖かく見守って(観察して)あげましょう。そうすれば、人の匂いを覚えて、懐いてくれます。

ただし、巣の状態や環境の変化によって、ハチ自体が気性が荒くなることがあります。また、誤って巣箱を蹴ってしまったり、掃除や採蜜の最中に巣箱を倒してしまったりして、蜂が襲ってくることもあり得ます。もし襲われてしまったら、逃げるが勝ち、蜂を振り払綯いながら、一目散に逃げてください。

ニホンミツバチが、人を警戒している時は、羽音が違うので、普段から羽音に注意しておくと良いでしょう。ミツバチが警戒心を高めると、身体を震わせ、羽を震わせて、シバリング(シヴァリング)します。シバリングとは、身震い等により体温調整を行う生理現象のことで、”オシッコをすると身震いがする”あれですね。ニホンミツバチが、尻の白い縞模様を目立たせながら、「シャー」という激しい音を出してシバリングしている時は、赤信号です。しばらく離れて、蜂たちが落ち着くのを待ちましょう。

そもそも、巣の掃除や採蜜の時等は、刺されないように、防御することが重要です。馴れは禁物ですよ!。夏でも、厚手の長袖、ズボンにウィンドブレーカーなど、刺されにくい服装をして、面防にゴム手袋を着け、長靴を履きましょう。

4.採蜜の方法と自家製蜂蜜

(1)採蜜の方法

採蜜の作業は、ちょっと難しいので、まずは先輩養蜂家を訪ねて、その作法を学ぶ方が早いです。ニホンミツバチを飼うなんてのは、自己満足の世界ですから、たいていの養蜂家は、”おだてりゃ木に登る”タイプの人ばかりです。なので、『先輩、教えて下さい』的に、平身低頭でおべんちゃらを言えば、まず間違いなく、喜んで教えてくれるはずです!。

基本的な作業は、巣箱から巣板を取り出して、それを布に巻き入れ、粉々につぶした後で吊るして、濾過します。これを、「垂れ蜜」方式と呼びます。気温が低いと、全部をろ過するのに数日かかりますので、出来るだけ暖かい室内で作業するようにして下さい。

(2)蜂蜜の保存

蜂蜜は、”常温でも傷まない”のが常識です。しかし、これは質の良い(糖度の高い)蜂蜜の場合で(または市販の殺菌処理がされたもの)、一般的には冷蔵庫で保管する方が良いでしょう。

市販の上等な蜂蜜だと、採蜜の花によって味が違いますが、砂糖水を与えすぎた手前味噌の蜂蜜は、砂糖の味しかしない場合も・・・。給餌した場合は、数週間は間を空けてから、採蜜しましょう。

(3)蜂蜜の効能

働き蜂は、花から花蜜と花粉を集めて巣に貯めます。若くて元気な働き蜂は、食べた花粉を体内で吸収・合成して、咽頭腺から分泌します、それが「ローヤルゼリー」で、女王蜂だけが食べられるエサになります。

一方、働き蜂が花蜜を食べると、ブドウ糖と果糖に分解されますが、これを口から巣に戻して熟成されると、「ハチミツ」になります。これは、自分たちや育児のための、エサになります。

また、プロポリスとは、ミツバチが作りだす”天然の抗生物質”です。樹脂やミツバチの分泌質、ミツロウが混ざり合ったもので、これを巣の壁や入口に塗ると、病原菌の繁殖や外的の侵入を防いでくれます。

蜂蜜の、疲労回復効果など、健康に役立つ効能は、私が今さら語るべくもありません(下手に語ると、薬事法に抵触しかねません・・・)。塗っても、切り傷や擦り傷、火傷、口内炎の治療に効果があり、何より、ハチに刺された時の応急処置にも最適と言われています。また、飲んでは、二日酔いの防止や解消、不眠症や喉荒れの解消、ストレスや便秘の改善に効果があるとも言われています。動脈硬化を防ぐ効果もあるらしいです。

そんなこんなで、若返った自分を想像しながら、楽しく養蜂を元気に続けていきたいものです!。

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脱サラ養蜂家

これが「額面蜂児」だ!

これが「額面蜂児」だ!
会社員を辞めて農業を始める人はいる。カフェを開く人もいる。しかし、養蜂家になる人は珍しいだろう。今回はIT会社のコンサル営業職から養蜂家に転身した男の話だ。「ミツバチがかわいくてしょうがない」と目を細める彼に、養蜂という仕事の魅力をとことん聞いた。

ライター。たき火。俳句。酒。『酔って記憶をなくします』『ますます酔って記憶をなくします』発売中。デイリー道場担当です。押忍!
> 個人サイト 道場主ブログ


2015年3月末に退職届を出す

彼が運転する車で向かったのは千葉県木更津市の山奥にある「蜂場(はちば)」。ミツバチの巣箱を置く場所をそう呼ぶらしい。

金子裕輝さん(36歳)

金子裕輝さん(36歳)

「もともと毎日のようにはちみつを食べていて、なんか体調がいいなあと思っていました。そんな時、吉祥寺のとあるお店で鈴木さんという今の師匠のはちみつに出会って、もう大感動したんです」

すぐに鈴木さんに会いに行った。やがて巣箱を持たせてもらい、なんと美しい世界なんだとさらに深く感動したという。かくして、2015年3月末に会社を退職する。

3歳の頃の金子さん

3歳の頃の金子さん

「『長靴が大好きで、晴れの日でも履いてた』っておふくろが言ってました。養蜂も長靴は欠かせないので、やっぱり運命なのかもしれません(笑)」

大学時代はアメフト部で活躍

大学時代はアメフト部で活躍

「スポーツで実業団に入れるんじゃないかと思ってましたが、そんな甘い世界じゃなかったですね。今思うと本当にアホだったなと」

車に積まれた養蜂グッズ

車に積まれた養蜂グッズ

ところで、道中ずっと気になっていたのは「刺されないの? 刺されたらやっぱり痛いの?」という問題。

「痛いっすよ。僕、10回ぐらい刺されました。遅い時刻に巣箱を開けたら、一気に3カ所ぐらい襲われたこともあります。ミツバチは繊細なので、そういう乱暴なことをするとすぐに怒るんです」

つかまった宇宙人ではない

つかまった宇宙人ではない

ネットで完全武装したものの、それでもまだ怖い。ミツバチは匂いに超敏感なので、酒が残っている人は刺されやすいと聞いて、昨日深酒したことを後悔した。

ミツバチほど高度な社会性を持つ生物はいない

そこへ師匠が登場。

師匠の鈴木一さん(46歳)

師匠の鈴木一さん(46歳)

彼は養蜂歴10年。やはり、医療機器メーカーからの転身組だという。現在は袖ヶ浦で「坊ノ内養蜂園」という養蜂場を営んでいる。そして、金子さんを含む7人の弟子を持つ。

この木更津市の土地は約2000坪で、師匠が知人からタダで借りているもの。金子さんは、その一画を使わせてもらっている。

「最初は会社に勤めながら養蜂をやってたんだけど、ハマっていくにつれて仕事中もミツバチのことが気になっちゃって(笑)。結局、退職して専業でやることにしたんだよ」

鈴木さんの手にメモが

鈴木さんの手にメモが

「これ、何ですか?」と聞くと、「ああ、銀行に融資を頼もうと思ってるんだけど、今日その交渉をする日だから忘れないようにと思って」

お茶目な方のようだ。そして、メモの脇にとまっているミツバチを払おうとしない。

「もう何百回も刺されてるけど、あの痛さには慣れないね。ちなみに、一番腫れたのは鼻の穴。たまたま運転免許の更新があってセンターに行ったんだけど、『本人確認ができないのであらためて来てください』って言われちゃったよ(笑)」

ネットに隙間がないかを今一度確認する。

青い帽子が金子さん、右端が師匠

青い帽子が金子さん、右端が師匠

さて、いよいよミツバチとのご対面だ。この日は僕以外にも「養蜂のことを知りたい」という有志たちが同行している。

金子さんが管理しているのは奥の4台の巣箱

金子さんが管理しているのは奥の4台の巣箱

養蜂といえば、何となく「ミツバチが集めたはちみつを採集して売る仕事」というイメージだったが、とんでもなかった。じつに繊細で多岐にわたる作業があるのだ。

ちなみに、ミツバチほど高度な社会性を持つ生物はいないそうだ。人間よりはるかに成熟した共同体を形成するともいわれている。

「外見」ののち「巣枠」を取り出す

「外見」ののち「巣枠」を取り出す

春はミツバチの動きが活発になる時期なので、週に数回はここを訪れる。着いて真っ先に行うのは「外見」。文字通り、外から巣箱や周辺を観察し、整然としているかをチェックする。

「すぐに中を覗きたがるのはアマチュア。巣箱の周辺を見ると養蜂家の力量がわかるんだよ」と師匠は言う。

その後、巣箱を開けて「巣枠」と呼ばれる厚板を取り出す。ミツバチが巣板を形成する土台だ。

「額面蜂児」はこのうえなく幸せな光景

間近で見ると、集団としての一体感がすごい。巣箱全体でひとつの生物のようだ。

1匹1匹はかわいいが…

1匹1匹はかわいいが…

集団になると何ともいえぬ凄みがある

集団になると何ともいえぬ凄みがある

これらのミツバチを振り落として、産卵の様子を確認したり採蜜のタイミングを計ったりする。

振り落とした後の巣

振り落とした後の巣

金子さんによれば、上の写真は養蜂用語でいう「額面蜂児(がくめんほうじ)」。さなぎがびっしりと詰まっていて、あと数日で大量のミツバチが生まれてくるという、養蜂家にとってはこのうえなく幸せな光景なんだそうだ。

なお、振り落としたミツバチは自分から巣箱に戻っていく。戻りやすくするために、地面と巣箱の間にスロープをかける。

よく見ると前の蜂のお尻を押している

よく見ると前の蜂のお尻を押している

「せっかくだから石原さんも」と言われて、ミツバチ付きの巣枠を恐る恐る持ってみた。

完全にビビっています

完全にビビっています

「王台」は女王蜂になる幼虫が育てられる小部屋

ミツバチの社会構成もまた面白い。まず9割が働き蜂で、これは産卵しないメスだ。残りの1割は働かないオス蜂。そして、集団の中に1匹だけ女王蜂がいる。

こちらが女王蜂

こちらが女王蜂

師匠が嬉しそうに言う。「女王蜂は他の蜂と比べてお腹が大きいうえに、妙に色気があるんだよ」。

採れたてのはちみつも試食させてもらった。

周辺で満開になっているアカシアのはちみつ

周辺で満開になっているアカシアのはちみつ

これが劇的においしかった。蜂が一生懸命集めたものだと思うと、さらにありがたみが増す。

師匠と金子さんは、他にもいろいろと面白いものを見せてくれた。

シェルターのような「王台(おうだい)」

シェルターのような「王台(おうだい)」

「王台」は女王蜂になる幼虫が育てられる特別な小部屋。2匹の女王蜂は共存しないので、万一同じ巣箱の中にこれが2つあった場合は片方を取り除いてしまうそうだ(人工的に分離させる場合もあり)。

スナック菓子のような「王椀(おうわん)」

スナック菓子のような「王椀(おうわん)」

「王椀」とは女王蜂を育てるための「王台」のもとになるキャップのようなもの。この中に女王蜂候補だけに与えられるローヤルゼリーが溜まる。

また、ミツバチには分蜂、すなわち「巣分かれ」をする習性があり、この時期にはひとつの集団が2つに分かれ、片方は新たな巣を求めて出て行ってしまうことがよくあるという。

「低い草むらとかに作ってくれれば回収できますけど、けっこう高い木の上に作ることもあるので、その時はあきらめるしかないですね」(金子さん)

上の方に「分蜂群」が行ってしまうことがあるという木

上の方に「分蜂群」が行ってしまうことがあるという木

天然の「ミツロウ」はリップクリームになる

数時間ほどお邪魔したが、養蜂の世界は知らないことだらけだった。たとえば、荒れたミツバチをおとなしくさせるためには、麻の布を焚いた煙をかける。

昔ながらの「ふいご」を使用

昔ながらの「ふいご」を使用

ミツバチが作り出した天然の「ミツロウ」は化粧品、ろうそく、クレヨンなどの原料にもなる。

きれいな六角形で構成させる「ミツロウ」

きれいな六角形で構成させる「ミツロウ」

天然の「ミツロウ」を精製して汚れを取るとリップクリームになり、これは市場価格1500円ほどで売られている。

丸めるとそのままろうそくに

丸めるとそのままろうそくに

「ミツロウ」で作ったろうそくの炎は、夕焼けの色温度とほぼ同じなんだそうだ。自然界の神秘である。

どうやら刺されることはないとわかったら、周囲の景色も見えてきた。

久しぶりに見たヘビイチゴ

久しぶりに見たヘビイチゴ

キジは「ケーン」と鳴く

キジは「ケーン」と鳴く

師匠によれば、「キジの卵はすげえうまいから、囲いの中で飼ってる蜂屋が多いんだよ」とのこと。

「balance」という自身のブランドから発売

金子さんは、間口が狭い養蜂の世界を少しでも変えたいと考えている。その一環として、都心での養蜂を始めた。

「荻窪にある知り合いの家の屋上を借りて、ちょうど3週間前に2箱からスタートしました。都内でも花はけっこうあるんですよ」

屋上の養蜂場

屋上の養蜂場

世界的にもミツバチは減っているため、こうした都市での養蜂スタイルが注目されつつあるそうだ。

こちらにもぎっしりといた

こちらにもぎっしりといた

千葉と同様、女王がいるかを確認して、産卵状態をチェックする。その際に「王台」を見つけたらすべて潰す。

巣箱に貼ってあった「検査済証」

巣箱に貼ってあった「検査済証」

ミツバチの幼虫を全滅させる腐蛆(ふそ)病などの伝染病に侵されていないことを保健所が保証するものだ。

このようにして集めた金子さんのはちみつは、「balance」という自身のブランドから発売されている。飲食店などへの販路も徐々に広がっているという。

1本1980円(税込)

1本1980円(税込)

上のはちみつは、カラスザンショウの花の蜜。すっきりとした甘みの中にスパイシーで芳醇な味わいがあり、今まで食べきてたはちみつとは明らかに違う。
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絶滅した日本ミツバチを離島で復… 会議なし、資料なし、会社に来る…

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