誰が会社を殺すのか? 駄目な経営者と危険な社風「7つの兆候」

Forbes Japan

筆者はこれまでに140社以上の企業と付き合ってきた。優秀で日進月歩の企業も多いが、そうでない企業もいくつかある。その中で、企業倒産も何度も見てきた。会社を殺す張本人を何度も見てきた。会社を潰す張本人、それは「経営者」と経営者がつくった「社風」である。例をあげて検証してみよう。

1. 経営者が景気の話をする

「景気が悪くて」と嘆く経営者はよくいるが、景気のせいにしても仕方がないのだ。フェイスブックのマーク・ザッカーバーグやアマゾンのジェフ・ベゾスが「景気」のせいにした記事など読んだことがない。

昨日出席した会議でも大苦戦中の企業の社長が、「不景気で新規投資が冷え込み、受注が取れない」と述べていた。同じ業界でも成功している企業はいくらでもある。そう、会社経営の不振の要因の殆どは社内にあるのが通常だ。しかし、原因を外部要因に求める駄目経営者は意外にも多い。

その会議で、筆者は「会社の認知度が低い」「技術力が低い」「技術力の高い人材を確保できてないのでは?」と述べたら、経営者が本当に嫌な顔をしていた。実は本人もわかっているのだ。でも、世の中のせいにしたいのである。

つまりは「経営能力がない」というのが本質だが、外的な原因にしている。病気の原因が「抵抗力の低下」や「栄養失調」であるにもかかわらず、「強力なウィルスが〜」と言っているようなものである。

2. 自分の会社よりも他社の事柄に口を出す

いろいろな経営者の会でよく顔を見かける経営者がいる。彼はいつも熱心に話している。業界のこともよくわかっている。大きな企業の戦略も知っている。そして、話の途中で、「それはA社の〇〇という技術ですね」と口を挟んで、会合を台無しにする。

彼の企業はさぞかし経営が順調なのだろうと思ったら、そんなことはない。倒産しかけている泥舟企業だった。その割に高額なセミナーに参加したり、社長の会にも積極的に参加したりしている。

実は、この様な経営者はひじょうに多い。「優れた経営者」の知識は知っているが、それが自らの実践として実際には伴っていないということだ。医者の不摂生のようなものである。

つまり、頭でっかちな経営者だ。しかも、面白いことに社内ではそんな話を一切しない。社内では地味な経営者で、外に一歩出ると「評論家」並みの力を発揮するのだ。何れにせよ経営をしていない社長の典型である。

3. 経営者が自分よりも優れた能力を持った人間を雇わない

大小にかぎらず、成長している企業には、プロ人材がいる。そして経営者よりも優れた人材が沢山いる。社長よりも給料が高いプロがいるケースも結構ある。そういう企業の社長は、「だってあのプログラムは彼でなくては無理だし」とか、「シェフ(料理長)だから当然」など嬉しそうに語る。

その一方で、先日ある企業が「資金調達をしたい」ということでベンチャーキャピタルを紹介したのだが、まるで話にならなかった。つまり資料がつくれないのだ。資料をつくれる人材を雇えば済む話なのだが、それがまったくいないのだ。数字も正確に把握できていない。

これは一例に過ぎないのだが、人数がいるのに役に立たない人材が多く、生産性が非常に低い。それでは会社は加速はできない。会社はチームだ。草野球チームで戦うか、それともメジャーリーグになるか、ということだ。

4. 管理職が多く実行部隊が少ない会社

以前、某電子機器を製造販売しているベンチャー企業へ行ってびっくりした。管理職だらけなのである。10名もいない企業だったが、管理職だらけで、誰が偉いのか全然わからなかった。

しかも部長級が部下よりも多い会社だった。アグレッシブに仕事をしているという感じよりも、老いぼれがウロウロしている感じだ。映画だったら「こう見えても……」という逆転の話にもなるのだろうが、もちろんそんなことはなく、会社はどんどん傾いてゆく。

若い実行部隊は非常に少なく、結果的に尻窄みである。現在では、銀行も相手にしなくなり、借金が増えている泥舟である。

5. お茶を出す部下がいる

ある会議に出かけて行って、「どうぞ」と女子社員がお茶を持ってくる企業がいまだにあったのでびっくりした。残念ながらそういう社風で絶好調の企業にあったことがない。お茶を出すのは、何故か若い女性で、男性は皆無だ。某百貨店もそうだった。その瞬間に「古いな」と思う。その考え方が社風としてNGだ。

某通信企業は、最初の面会はペットボトルのお茶が出た。だが、次回から何も出なくなった。何故なら、契約後はお客ではなく「パートナー」だからである。

この会社の会議は非常に短い。だから水も出ない。「30分だからいいですよね」っと。それこそお茶を飲むとかメモをとる時間もないくらい忙しい会議なのである。終わったあと、思わずぐったりする。しかしこれが本来あるべき姿である。

6. 部下が会議で何も言わない会社

会議で部下が何も言わない会社が結構ある。会議は参加した人間が全員話すのが当然なのに、「何故黙っているのか」と聞いても返事がない。そういう社風なのだろう。

会議で黙っているのは人件費の無駄である。無駄な時間は1分でもなくしたほうがいい。そういう部下は黙ったまま、会社が沈没するその瞬間を待っているのだろう、きっと。

7. うちの会社は馬鹿ばっかりだからという経営者

「うちの会社は馬鹿ばっかりだから」と社員をこき下ろす経営者は意外に多い。こういう経営者は、どうして会社をつくったのだろうかと思う。社員を面接してその人を雇うのは経営側なのに、それを「馬鹿」と言うのはおかしい。自分だけが優れていて、社員は能力がないと判断しているのだろう、きっと。

また、「うちの役員がうるさくて」「うちの株主が馬鹿で」などと言う経営者も結構いる。だったら変えればいいのだ、自分の会社なのだから。

結論 会社を殺すのは経営者だ

ここに例をあげた「経営者」と経営者がつくった「社風」がある一方で、経営者に殺されかけていた古い体質の企業が復活したのも最近見た。IT企業に買収され、給与やボーナスもろくに出なかった赤字企業がわずか1年で黒字化。創業以来初のボーナスが出たという。わずか1年で売上高が200%以上の成長を遂げ、快進撃を続けている。

経営者が変わり、数人のスタッフが乗り込んできただけである。社員にパソコンを配り、ペーパーレス化。全員にメアドを付与し、さらにチャットを活用。ポロシャツもつくり若々しくなった。会社の眠っていた財産でレンタル事業を開始し、億単位の売上をつくった。さらに次々と新規事業を開発し、軌道に乗せている。負債の完済もまもなくだ。

まさに、沈みかけていた泥舟が、エンジン全開のモーターボートに変身し快進撃を続けている。これも経営者次第で会社が生まれ変わるいい例だ。詳細は分からないが、ライザップグループが買収した企業を半年で黒字化しているのも同じなのかもしれない。日本電産の創業者の永守重信氏が、買収先の黒字化に次々と成功するのもこれなのかもしれない。シャープに鴻海から送り込まれ、V字回復に導いた戴正呉氏も同じかもしれない。つまり経営者次第なのだ。泥舟にするのもモーターボートにするのも。

つまりは、会社を生かすも殺すも経営者次第なのである。会社を殺す経営者は、経営をしながら自家中毒で倒産してしまう。自分の毒で自分を駄目にしてしまうのだ。経営者が駄目な社風をつくり、そして壊れてゆく。

もし、これを読んでいるあなたが、ここにあげた会社を駄目にする例の多くで該当する企業に働いていたら、それはもう泥舟だ。すぐに逃げたほうがいい。ゆでガエルになる前に。

【連載】野呂エイシロウの「誰が〇〇を殺すのか?」

 

 

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